梁山一歩談 3巻
- 黄表紙。山東京伝著・北尾重政画。寛政4年(1792)刊。3巻(上中下各5丁)、合1冊。近世日本に輸入された中国白話小説『水滸伝』の人気は、漢字カタカナ交じりの翻訳書『通俗忠義水滸伝』(宝暦7年寛政2年[1757-90])によって拡大した。同書が完結すると、京伝は早速その書名を捩(もじ)った洒落本『通気粋語伝(つうきすいごでん)』(寛政3年[1791]刊)を出し、翌年、『水滸伝』の冒頭部分を達意の画文で要約した本作と『天剛垂楊柳(てんごうすいようりゅう)』(当館請求記号:207-285)が出た。この流れは、さらに曲亭馬琴の中本型読本初作『高尾船字文』(寛政8年[1796] 当館請求記号:208-715)などを経て、京伝の半紙型読本初作『忠臣水滸伝』前後編(寛政11年-享和元年[1799-1801] 当館請求記号:190-131)につながり、〈後期読本〉ジャンルの形成を促進した。本作は、太尉洪信が伏魔殿を開いてしまうところから、悪役高俅(こうきゅう)の出世、王進の受難、史進・魯達(出家して魯智深)の登場と再会まで。題名は、宋江以下108人の魔王の立てこもる「梁山泊」へのプロローグにあたることと、読者にとって入門編であることを掛けるか。序に「稗説」ではあるが「教(をしへ)を垂(たるる)に足る」という。なお、掲出本には上巻の絵題簽が残り、版元「つたや(蔦屋重三郎)」の名も載る。『山東京伝全集 第3巻 黄表紙3』に翻刻・解題所収(棚橋正博、ぺりかん社、2001.3)。(大高洋司)(2019.2)(参考文献)『日本古典文学大辞典』「梁山一歩談」の項、水野稔執筆、岩波書店、1985.2大高洋司『京伝と馬琴 〈稗史もの〉読本様式の形成』1-3「『忠臣水滸伝』の成立・補遺」、翰林書房、2010.5