近世流行商人狂哥絵図
- 狂歌・絵画。曲亭馬琴著・原画者未詳。文政13年(1830)馬琴序、天保6年(1835)畳翠軒識語。写本1冊。内題・外題なし。書背に墨書された「近世流行商人狂哥絵図」をもって書名とする(下小口に「商人狂歌合」とも)。内容は、明和・安永(1764-81)以降に江戸市中を往来した零細な商人・芸能者たちの姿絵と画中詞、また彼らを題材とした23番の狂歌(46首)と判詞(文政12年[1829]7月識語)に、「附録」として諸職(30ほど)の紹介を追加したもの。文政13年序に、前々年、屋代輪池(弘賢)から詞書を依頼された絵巻の副本(冊子)作成のことが記され、同12年識語に「是即其副本也」とあって、これらのことは『曲亭馬琴日記』(第2巻 2009.8)からも日を追って確かめられる。馬琴は、輪池に絵巻を戻した(文政12年9月10日)後、「附録」を加え、序に経緯を記して手元に留めたものと思われる。掲出本は、これを馬琴と交流のあった石川畳翠が借用した転写本。原本である絵巻は、東京国立博物館所蔵『廿三番狂歌合』がそれにあたるか(未見)。早稲田大学図書館「曲亭叢書」所蔵『惜字雑箋』(同大学古典籍総合データベース「江戸文学コレクション」)に文章部分の自筆稿を収め、また『曲亭遺稿』 (国書刊行会、1911.3)に活字翻刻が収まるが、掲出本との間に異同がある。後者解題に「白河楽翁公(松平定信)が屋代輪池を介して画稿を寄せて(馬琴に)絵詞を需め」たものとするが、根拠は未詳。なお定信は、文政12年5月13日に死去している。(大高洋司)(2019.2)(参考文献)『曲亭馬琴日記』全4巻・別巻、柴田光彦新訂増補、中央公論新社、2009.7-2010.2