西房内御用記録
- <「宗家文書」の解題について>「宗家文書」の解題は、「国立国会図書館「宗家文書」目録」(『参考書誌研究』第76号)の分類ごとに作成されています。以下は、目録分類「5倭館改修記録」の解題です。年代順目録は、リサーチ・ナビ調べ方案内「国立国会図書館所蔵「宗家文書」」を参照してください。書誌情報タブ(詳細レコード表示)の「被参照資料(URL)」の項目に関連資料へのリンクがあります。<解題>5 倭館改修記録 18冊延宝6年(1678)完成した草梁倭館の改修工事に関する記録。倭館の建築物のうち、西館の客館(西の三大庁)と東館の館守家・裁判家・開市大庁(東の三大庁)の大規模な6棟については、改修工事にかかわる全費用を朝鮮側負担としている。そのため、25年に一度の大改修を「大監董」、部分的な修理を「小監董」と称し、訳官(日本語通事)が監董官となって費用見積から全工程の統轄・監督を行う。ただし倭館は、特に居住空間が和風建築であることから、日本人大工や左官・木引・雑役夫ら対馬藩の普請関係者が渡海し、朝鮮側と合同作業を行わねばならず、普請奉行の任命から改修工事の終了までの全工程が記録に書き留められた。当館が所蔵するものは、以下の11回分の改修工事に伴う記録で、うち3回分が巨額の費用を伴う大監董である。(1)正徳5年(1715)小監董『西房内御用記録』『一特送使房内改建記』(2)元文5年(1740)小監董『第一船下房内改建御用記録』『第一船行廊改建記録』(3)寛延2年(1749)大監董『東館修理記録』『僉官屋修補日記』『東西館修造記録』(4)安永3年(1774)大監董『西館修補記録』(5)天明6年(1786)小監董『一特送[使下行廊修理記録]』(6)寛政3年(1791)小監董『開市大庁改建記録』(7)寛政8年(1796)小監董『第一船下行廊修理記録』(8)享和2年(1802)大監董『館守家裁判家修理記録』『東西館修補雑記』(9)文化12年(1815)小監董『一特送使下行廊修理記録』『往覆書状控』(10)文政9年(1826)小監董『参判家改建記録』『朝鮮御用支地御勘定奉行所往覆扣』(11)嘉永4年(1851)小監董『参判家下行廊外向より監董ニ付被召仕候毎日記』このうち(3)『東館修理記録』や(6)『開市大庁改建記録』に添付された館守家・裁判家・開市大庁の絵図から、門・玄関・縁側・廊下・台所・風呂場・便所、さらに礎石の位置を確認できる。各記録とも普請関係者の出入と建築資材の入手に関する記事が多く、特に資材出費の40%近くを占める屋根瓦の調達にかかわる記事が目立つ。時に倭館内の茶碗竈で焼かれることもある瓦は、魔除けとなる鬼瓦の表面に宗家の家紋(丸に四ツ目結)入りのものが作られ、日朝双方の職人によって日本式(三枚がけ)のやや急向配な屋根をかけて雨漏りを防ぐなど、日朝建築史を考察するうえでの貴重な記録として注目される。倭館の改修については尹裕淑『近世日朝通交と倭館』(岩田書店、2011年)、木村和代「草梁倭館の修理・改築における資材調達」(『史学』83─2,3、2014年)を参照。(田代和生)(2017.3)