あだ敵打出のこづち 2巻
- 黒本2冊(合1冊)、題簽欠、画作者名無記、柱題「仇かたき打出の小槌、あた敵うちで(て)のこつち」。同内容の東京都立中央図書館加賀文庫本に下冊題簽「新板/あだかたき打出槌(うちでのつち) 下」あり、『清盛名所盃』巻末目録に載る「仇討打出槌」が該当し山本版で卯(宝暦9[1759])年刊と推定される。なお、当館本下冊表紙に題簽の剥離痕があり西宮の商標が確認出来る。山本版を得た西宮は「新板/敵役納世継(かたきやくをさめのよつき)」と改題したらしく、『青本絵外題集』1(貴重本刊行会、1974.7)79頁に下冊題簽あり、大黒天が俵の上から悪人を踏みしだく8丁裏・9丁表の場面で内容と一致する。従って厳密には当館本は「新板/敵役納世継」ということになる。(内容)(上)下総国風間将監の後室轟御前は継姫忍の前を亡き者にして実子若葉の前と弟悪四郎を娶せ将監を失おうと工む。立ち聞きした若葉の前は母と叔父の悪事を姉の許婚緑之丞に話す。緑之丞は忍と婚礼すれば後室は姑となり敵対できないので、若葉の前と契りを結び書置して二人で家を出る。婚礼当日、坂田新左衛門に傅かれ姫が婿方の館へ至ると、出迎えの猶衛門が書置を見せて切腹しようとする。坂田は後家養子の法式を示し切腹を止める。悪四郎は若葉の前と婚礼して家を継ぎ姉は尼にして押籠め置くと言い、将監は怒る。坂田は防戦するが将監は悪四郎に、忍姫は後室に刺殺される。(下)緑之丞が坂田の最期の依頼により風間家の重宝大黒天の掛物を宝蔵から取り出すと、悪四郎一味が討ち取ろうとひしめく。若葉の前は父と姉の最期を聞いて悲しむ。悪四郎は家の重宝奪還に駆け付け、緑之丞を討ち若葉の前を奪い取ろうと隠れ家へ踏み込む。大黒天が現れ出、打出の槌を上げると数の俵湧き出て大勢を打ち拉ぐ。悪四郎の家来は皆降参し、緑之丞と若葉の前は悪四郎を「親舅の敵」と切殺し「大黒天の御加護」と信心を深め栄え給う。(木村八重子)(2018.12)(紹介)「『新板仇敵打出槌』について」(細谷敦仁、「叢」28号、2007.2、東京都立中央図書館加賀文庫本と当館本の書誌。東京都立中央図書館加賀文庫本を底本とした影印・翻刻・考察)。考察には『清盛名所盃』巻末目録と題簽の関係を詳しく検討し、西宮版改題本「敵役納世継」に言及している。