伊勢三郎物見松 2巻
- 『清盛名所盃』の巻末目録に載る(画師は鳥居清倍、鳥居清満、鳥居清重筆)。黒本2冊(合1冊)、西宮版、題簽上冊「新板/伊勢三郎物見松 上」(振り仮名:いせのさむらうものミのまつ)あり。『青本絵外題集』1(貴重本刊行会、1974.7)62頁に西宮版下冊分題簽あり。大東急記念文庫本(黒本合1冊)題簽「新板/伊勢三郎物見松 上」は青海波と波頭意匠の山本版。山本から西宮に版が移ったのであろう。柱題「物見の松」「ものミの松」。『日本小説年表』(『近代日本文学大系』第25巻 国民図書、1929)は「寶暦八戌寅年出版」とする。(内容)牛若もの、伊勢三郎と熊坂。(上)平家譜代の伊勢前司は讒言により浪人し、嫡子三郎に我亡き後は熊坂長範を親と思って仕えよと遺言。熊坂は吉次の金に迷い押入って牛若丸に討たれる。牛若は奥州秀衡を頼み、錦戸太郎、伊達次郎、和泉三郎がお目見得し御所を設え高館殿と崇める。牛若は武者修行に出る。伊勢三郎は三条右衛門から熊坂を討ったのは牛若と聞き仇を討とうとする。三千年を経た蟒蛇(うわばみ)が化した娘が野で牛若に酒肴を振舞い、海へ出て竜になるため山を崩す、早く立退けと言う。牛若は一死多生の理に任せ、所の百姓に知らせ友切丸でこの大蛇を切る。牛若は信濃で宿を借り亭主鷲の尾源八に50両渡すが、亭主は殺して全部取ろうと金を返す。(下)源八は牛若に切りつけ却って切られる。息子鷲の尾三郎が親の仇と切りつけるが、牛若は「仇は金」と金を渡す。伊勢三郎は松上に居て往来の旅人を剥ぐ。駿河二郎、鈴木三郎が旅人の財布を捉える。旅人は「父の人参代、お慈悲に」と言う。伊勢三郎は遂に牛若に会い、「養父の仇」と言う所に松の梢に長範の霊魂現れ、「牛若君こそ望む主君、忠勤を励め」と言う。伊勢、駿河、三条右衛門改め亀井六郎が忠臣となる。近江辺で馬上に威を張る瀬尾に会い、牛若は引ずり下ろし、伊勢三郎は父の讒言を責め引き殺す。牛若は馬を奪い浮島ヶ原を指して急ぎ、重忠が兄弟を引き合わせ、頼朝牛若対面。(木村八重子)(紹介)木村八重子「未紹介黒本青本」40(「日本古書通信」第1012号、2013.11)