絵本物見岡
- 鳥居清長画の江戸名所風俗絵本。半紙本3巻合1冊。墨摺。初摺り本は伊勢屋吉十郎と西村源六の相合板で、その後摺り本の西村単独板を蔦屋重三郎が求板したもの。絵師署名「画工 関清長」。広告「後篇 続物見岳」、奥付に蔦屋(重三郎)の蔵板目録半丁「画図勢勇談」以下13点を付す。関(鳥居)清長の序に「絵の事は素人なりと、後の譏りをも恥すおよはさる道に、いまた迷ひつたなき筆の行先もわきまへす、東都の名所をこゝかしこ得たり」云々と、幾重にも謙遜の修辞を弄する背後に、板元が本絵本の出板に慎重を期した雰囲気が伝わってくる。上巻、新吉原正月、王子稲荷、上野、品川、日暮里、亀戸天神、隅田川大黒屋、橋場の渡、待乳山聖天。下巻、両国橋、三股、五百羅漢寺、深川、新吉原仁和嘉、歌舞伎、産神参り、浅草歳の市。絵の大半は、名所の風景とバランスを取りながら、八頭身の美人を描き込むことに比重を置いている。名所画は、清長の独想に基づくものも少なくなく、後の江戸名所絵本や一枚摺り板画に影響を与えた。(鈴木淳)(2016.2)(参考文献)『絵本物見岡』(近世日本風俗絵本集成 臨川書店 1980)鈴木淳「『絵本物見岡』私考―江戸名所風俗絵本の成立―」(『江戸の絵本―画像とテキストの綾なせる世界―』(八木書店 2010.3)