大磯地蔵咄 2巻
- 黒本2冊(合1冊)、柱題「ち(ぢ)ぞ(そ)う」。所蔵は当館のみ。上之巻題簽は当館蔵『青本外題張込集』1(請求記号:寄別5-4-3-7)に、下之巻題簽は『青本絵外題集』1(貴重本刊行会、1974.7)104頁にあり。丸に「村」の商標により村田版。意匠に白鼠と延命袋あり子(明和5[1768])年刊。(内容)地獄の騒動と大磯の切られ地蔵由来譚。画は西村風、面白い会話で話を進める作品。 (上)朝比奈、弁慶、金時らが地獄で諸道具を微塵に踏み壊す。無限の釜の底が抜けて居処がない三途河婆、木の股で首が不安定な牛頭馬頭(ごずめず)、浄玻璃(じょうはり)の鏡も業(ごう)の計も仮道具で間に合わせ、閻魔、地蔵菩薩、諸王が諸道具新調の相談。閻魔に頼まれた六道の地蔵は大磯の地蔵に寄進を申しつけ、大磯の地蔵は仕方なく狢(むじな)狐狸を集め往来の旅人を化かして取ろうと談合、狢狐狸は思い思いに化けて往来の旅人の銭金を奪い取るが、三十五両余しか集まらず、集金の鬼に言い訳する。(下)飛脚が通り、平塚から大磯七丁の間で日が暮れたのは合点行かぬと狐狸狢の化物を踏みのめし、石の地蔵の後ろへ逃げ隠れたのを真二つにしようと石の地蔵を袈裟懸に切って小田原へ。六道の地蔵と閻魔が聞いて驚き、医者を探し、耆婆(ぎば)の弟子イバが療治に遣わされ漆の療治をする。鬼も倶生神(くしょうじん)も三途河婆も見舞に来る。地獄の道具が調い火の車で運ぶ。地獄も金次第、大磯の地蔵に大変世話になった。閻魔、地蔵喜ぶ。鬼、三途河婆、倶生神、餓鬼阿弥踊り、閻魔は喜びの余り音頭を取る。大磯切通しの地蔵堂には往来の人が参詣する。石の地蔵には今も袈裟懸の傷があるそうだ。(木村八重子)(2020.9最終更新)