幼な曽我 2巻
- 青本2冊(合1冊)、題簽欠。該当すると思われる題簽は『青本絵外題集1』の53頁にある「風流/大いそ/のとら/おさな物語上」で絵は旅姿の靜御前と弟の磯野四郎(5丁表の場面)。この題簽の冊次下に丸に「江」の商標あり、江見屋刊、刊年未詳。柱題「おさな」、画作者名無記(西村風)。知られている所蔵は当館のみ。(内容)近松門左衛門作浄瑠璃「大磯虎稚物語」を草双紙化した作品。(上)照日太郎と金沢九郎は錦戸の戦で得た判官・弁慶・宗徒の首九つを並べ、御披露を願う。畠山重忠は義経が頼朝に弓を引いたので討たれたのは源氏長久の瑞相と述べ、梶原は大いに喜ぶ。重忠は「大将の首実検に故実あり、まして御舎弟」と義経の御首に一礼して口を開け一通の文を得、読む。弁慶の首は、眉間尺が剣を吹いたように梶原目掛けて口から雁股を吹き掛け、烏帽子を吹き抜いて後ろの松に立つ。一念恐ろしく、金沢は肝を潰し、照日は驚く。重忠は頼朝公の仰せで九人の首を獄門に晒すため石櫃に入れて運ばせる。粟畑に雀が飛び群がり、大勢で詮議すると義経の首を取り返そうと靜御前が粟の茂みに潜み居る。胡散な女だと靜御前を捕らえた番場忠太を本田四郎が捕らえ散々打擲し、重忠は止める。難儀する靜に重忠は義経の御首を渡す。重忠はたとえ朝敵でも御舎弟は獄門に掛けるべきではないと言い、梶原は赤面する。本田次郎が靜御前を介抱し重忠の北の方に預け労る。靜御前は弟磯野四郎が迎えに来たので、暇乞いし弟を供に道行きし島田宿に着く。弟が道で霍乱し、立ち寄った庵でも主人小柴軍司が患っているので、たった1粒残っていた薬を進上し軍司の女房は喜ぶ。弟はこの所で落命する。(下)番場忠太が靜御前を捕らえに来、軍司が防ぎ戦う間に軍司女房が靜御前を背負い逃げ、軍司は忠太に殺される。軍司女房は我が子嘉門に会い、軍司が討たれた事、今は遊君虎となり大磯に居る妹を訪ねてこの事を話したいと散々に泣く。靜御前は様子を立ち聞く。嘉門は父を討った番場忠太を詮議し仇を討つと母を安心させる。嘉門は大磯へ来、虎を尋ねながら遊ぶ。恵比須屋の格子先で新造たちが清掻きを弾き、嘉門の男振を褒める。嘉門は大磯恵比須屋の二階で心に染まぬ大一座の遊興をし妹虎に話そうと様子を見る。虎も勤めなので仕方なく揚屋へ来る。兄妹は床入りして名乗り合い、親小柴軍司が番場忠太に討たれたと聞いて驚いた虎は、廓を立退き共に忠太を討とうと言う。後先になって立退く虎に大門口で夜番の男が夜半不思議に思い声を掛けるが、虎は伊勢屋のすぎが酒買いにと返事して郭を忍び出る。曽我十郎は虎が間男と逃げると見て腹立てる。虎は言い訳し、嘉門は虎の兄と名乗り初対面の挨拶する。曽我十郎は母に時致の勘当を許すよう訴える。母は喜び小袖を兄弟に与える。女中たち喜ぶ。曽我時致は親の勘当許され喜ぶ。嘉門は親の仇、曽我十郎は舅の仇と番場忠太は討たれる。(木村八重子)(2018.1)